家族愛の結晶『2012』の魅力

こんにちは、discard-enamelです。

 

今回は2009年に公開された、ローランドエメリッヒ監督の映画、『2012』についてその魅力をお話したいと思います。

 

『2012』は知っている方も多いのではないでしょうか?公開された当時、古代マヤ文明で作られた暦が2012年の冬至に終わりを迎えることから、その日に世界は終わりを迎えるという噂が世界的に広まっていました。そこから着想得た映画で、災害シーンは非常に迫力があり、興行収入も約8億ドルを記録した大ヒット映画です。

 

この『2012』という映画は、災害発生時の迫力あるシーンも魅力ではありますが、タイトルにも書いた通り、家族愛というのが根底にあるテーマです。

そもそも、ディザパニ映画のそのほとんどが家族愛を描いています。非常時にこそ愛する家族とのつながりが浮き上がってくるものです。

『2012』は家族愛を描くディザパニ映画の中でも一風変わった特徴を持つ映画です。その特徴をネタバレを含めつつ紹介したいと思います。

 

まずは軽いあらすじ。

 

2009年。惑星直列により活性化した太陽の影響を受け、地球の内部が異常な高温となり、それが後に地球規模の影響を与えることが分かった。その事実を受け先進各国は秘密裏に対応計画を開始した。

それから三年後の2012年。カリフォルニアに住む売れないSF作家のジャクソン・カーティスは、離婚した妻に引き取られた子供達と共に休暇をイエローストーンで過ごしていた。そこで海賊放送をしていた男から世界の滅亡を聞き、初めは半信半疑だったが、バイトの雇い主だった大富豪が奇妙な行動をとるのを見てそれが事実と確信する。

直後から大規模な地殻変動が起こり、カリフォルニアは海へと沈没、イエローストーンは大噴火を起こし、ジャクソンは家族を守りながら、政府が秘密裏に作った”箱舟”を目指す。

 

以上が物語の導入です。

 

一番最初にこの映画を見て思ったのは「脱出ゲームだこれ」という感想でした。

沈没するカリフォルニアからの脱出→崩壊するアメリカ大陸からの脱出→墜落する飛行機からの脱出→水没する船の機関部からの脱出

あらすじ以降はこんな感じにストーリーは展開していきます。

もちろんただの脱出ゲームというのがこの映画の魅力ではありません。こんなことを言っていますが、私は『2012』という映画が指折りに好きな映画の一つです。

 

 先にも書きましたが、『2012』は普通のディザパニ映画とは少し変わっています。

よくあるディザパニ映画のパターンでは、主人公が科学者である場合が多く、彼らが災害に立ち向かう姿と、彼らの家族との絆が描かれることがよくあります。もしくは科学者でなかったとしても、問題解決のキーマンとして主人公が選ばれたり。

しかし『2012』の主人公ジャクソンは科学者でも、問題解決のキーマンでもありません。売れない作家で、家族に捨てられた冴えない一般男性です。特に変わった特技や技能があるわけでもない、どこにでもいるような人間が主人公というのはディザパニ映画の中では珍しいことです。

 

『2012』では、災害に翻弄される一般人の側としてジャクソンが、災害に対処する科学者・政府側の人間としてエイドリアンという重要キャラクターが居ます。二人のそれぞれの立場から物語は展開していき、最後で二つの物語が合流してクライマックスへと繋がります。詳しくはグランドホテル方式、アンサンブル・キャストと呼ばれる物語の表現技法ですが、この物語の構成が『2012』をどこにも負けない家族愛の映画へとさせているのです。

 

科学者でもない一般人のジャクソンは、次々と起こる災害に対し逃げることしかできません。それ故に、彼の物語では家族の再生という部分が強調されています。

彼を毛嫌いしていた息子は何度も危機を乗り越え奮闘する父親の姿に慕情を素直に出すようになり、元妻は懸命に自分達を救おうとする彼の姿に父親として夫としての強い愛情を感じます。

こうした家族が再び一つになって困難に立ち向かう姿を、丁寧に、強い根拠を持って描いているのが『2012』という映画なのです。

 

もちろん、作品として難点もいくつかあると思いますし、人により評価が多少分かれる部分があるとは思いますが、家族愛をいう面からみると、『2012』は深く心に残る映画だと私は感じています。

 

もしまだ見たことがない方が居ればぜひ一度見ていただきたいですし、一度見た方も、こういう視点でもう一度ご覧になってはいかがでしょうか?

 

では今回はこの辺りで。次回も素敵な作品を紹介したいと思います。