ディザパニの王道『ソーラー・ストライク』の魅力

今回ご紹介する映画は、いわゆるB級映画にカテゴライズされている作品です。

 

2005年制作、ポール・ジラー監督の『ソーラー・ストライク』

検索していただくといくつか評価が見られると思いますが、まあ見事なまでに軒並み低評価を受けている作品です。

 

それでも私はこの映画、DVDを持っているくらい好きです。

 

低評価を受ける理由は確かにあります。災害の発生原因も、その解決方法も少々リアリティに欠けるところがありますし、昨今のVFXバリバリのパニック映画を見慣れていると映像が古臭く見えてしまう点もあります。

 

しかしそれらはこの映画の表面的な部分。私はこの『ソーラー・ストライク』、ディザパニ好きなら一度は見るべき作品だと思っています。

 

その理由を書き綴る前に、まずは簡単なあらすじを紹介しましょう。

 

主人公、ルーカス・フォスターは宇宙科学の研究者だったが、高慢で自分勝手な性格が災いして勤めていた研究所をクビにされ、妻からは離婚をされていた。それでも企業家として転身し航空会社を経営、メタンガスによる大気汚染の実情を調べるため、ロシア製のMAV(超小型飛行機)による単機大気圏脱飛行へ出資、打ち上げを控えていた。

打ち上げは成功し、順調に大気のデータを集めていたMAVだが、原因不明の大破をしてしまう。そしてその前日、太陽が異常なCME(コロナ質量放出)を発生させていたことが判明する。

MAVの大破に、CMEと大気圏中のメタンガスが関係すると突き止めたルーカス。その間も太陽は断続的に異常な量のCMEを発生させていた。ルーカスはCMEがメタンガスに引火し、大気圏を炎上させるという自論を主張する。最初は周囲も理解を示さなかったが、次々に起こるCMEを原因とした衛星墜落やルーカスの説得もあり、彼に協力をするようになる。

ルーカスは大気圏炎上を防ぐ打開策として、潜水艦から北極に核爆弾を撃ち込み、大量の水蒸気を発生させ炎上を鎮火させる案を大統領に提案。しかし肝心な核爆弾を搭載した潜水艦が北極近海には無く、唯一搭載しているのは同じ近海で演習をしていたロシアの潜水艦だけだった。その上、衛星墜落の影響で両国の潜水艦とも連絡が取れず、一触即発の状態に陥っていた。

大統領はルーカスの提案を一時保留。業を煮やしたルーカスは、直接ロシア潜水艦の艦長を説得しようと決め、単身北極近海へと飛び立つ。

 

以上が『ソーラー・ストライク』の中盤までのあらすじになります。

 

読んでいただいても分かる通り、なかなかユニークな内容の映画です。

地球の大気を燃やし尽くすほどのメタンガス濃度とは如何ほどなのか?

それがCMEにより引火するのか?

そして北極を核爆破してどれほどの水蒸気が発生し、それで本当に鎮火させることが出来るのか?

とまあ、科学考証の部分の時点で突っ込みどころは満載です。映像や舞台のセットなんかもどこか今ひとつ……。

 

「所詮B級映画だね」と結論づけてしまいそうですが、ちょっと待ってください。

 

『ソーラー・ストライク』は昨今のディザスタ―パニック映画では薄れつつある、ディザパニの王道をひた歩いている映画なのです。

 

ディザパニの王道とは何か。それは「破滅的な災害に対し、奇想天外なアイディアでそれを乗り越える」というストーリーです。

 

最近のディザパニ映画では自然災害に対抗しようというより、自然に翻弄されながらその中で家族愛を描き出す風潮が多くなってきていますが、もともとディザパニ映画は、災害に対しどう対抗するのか?その奇想天外さと、自然の大きな力の前でも挫けない人間の強さを描いてきました。

例えば『アルマゲドン』では、向かって来る彗星に着陸して穴をあけて爆破させよう、という破天荒なアイディアが登場しますし、『ザ・コア』という作品では地球の地殻内に突入するという、かなり独創的なアイディアが登場します。こういった今まで聞いたことの無いアイディアというがディザパニの見どころの一つです。

 

『ソーラー・ストライク』では大気圏炎上という前代未聞の災害に、北極を核爆破するというこれまたクレイジーなアイディアが飛び出します。科学的根拠の薄さは目立ちますが、こうしたディザパニ映画本来の持ち味を示そうという姿勢は評価すべき点だと思います。

 

さらに『ソーラー・ストライク』で注目すべき点は、主人公ルーカスのキャラクターと、非常にしっかりとした構成のストーリーを持っていることです。

 

ディザパニ映画には、破天荒なアイディアと行動力を持った主人公が必ずいます。

ルーカスは高慢で自分勝手ですが実力は確かな研究者であり、いち早く災害発生を予見、独創的な解決策を打ち出し、自分を信じて突き進む。まるで少年漫画の主人公を彷彿とさせる魅力あるキャラクターです。

物語の後半、ルーカスはロシアの潜水艦に乗り込みます。アメリカ人の彼ですが、ロシア製MAVをテストした際にロシアの軍人将校と顔見知りになり、そのロシア軍人が目的の潜水艦に艦長として乗り合わせていたため、乗り込むことに成功しました。

一見あり得ない流れに見えますが、それが出来うるだけの伏線は、ルーカスのキャラクターを含め物語の前半から無理なく作り上げられているのです。

 

ディザパニの本意を汲み、巧みな物語と魅力的なキャラクターを持つ映画『ソーラー・ストライク』

ただのB級映画だと見限らず、ぜひ何度でも噛みしめてもらいたい作品です。

 

それでは今回はこの辺りで。次回も魅力ある映画をご紹介したいと思います。